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白鳥9号 (九號天鵝)

六牧
CCC創作集
宇宙へ飛び立つ夢を持つクローンは、自身の選択がすべて自身のものではないという疑念に駆られつつ……。
試し読み

あらすじ

複製された生物は、34.9%の確率で「上の世代」と同じ選択を選ぶ。

チオは世界で唯一、誕生に成功したクローン人間であり、その遺伝子はある偉大な宇宙飛行士から取られた。幼少期から白鳥の飛ぶ姿を熱心に観察し、宇宙へ飛び立つ夢を持つ。しかし、厳密な監視を受ける成長の過程で、自身の運命がすべて決定されてしまっているのではないかという疑念を抱く。

宇宙飛行計画が執行されんというとき、幼少期から共に育った保母ロボットの機体更新に遭遇する。ロボットのコアがいとも簡単に複製されていく様子を見たチオは衝撃を受け、自分の殻に閉じこもるようになる。と同時に、クローン人間に対する社会的な圧力が押し寄せ、飛行前日には抗議デモが発射の安全を脅かすまでに至る。飛行計画が取り消されようとするその時、チオは自分の中で飛ぶことを愛する初心を再発見し、心から自分の願いを持ち、宇宙飛行計画を全うする。


AIや科学技術倫理、自由意志に触れる深みのある作品。

登場人物

  • チオ

    チオ

    現時点で世界初、唯一のクローン人間。その遺伝子は成功した宇宙飛行士から取られ、クローン人間の技術的裏書きとしても宇宙飛行計画を全うする使命を帯びる。飛ぶことを愛しているにもかかわらず、コピーされたという己の身分が常に心のわだかまりとなり、自分自身の意志を疑っている。唯一の頼りは、幼少期から側にいる保母ロボットのアンドと、川辺で出会ったシジェロ老人。

  • アンド

    アンド

    チオを幼少期から世話している保母ロボット。そのコアはチオの遺伝子提供者でもあるオズから複製された人造骨格AI。いつもチオに「どこへ行きたい?」と尋ねている。

作者

六牧

六牧。ユーモアのある人になることを夢想する。童話や短編を好み、しばしばドキュメントを見て、自身がたどり着けない新たな生命を観察する。 PLURK / IG:@greamoself
© 九號天鵝/六牧/CCC創作集 / KADOKAWA TAIWAN CORPORATION