ゲームのバグ削除を専門とするプログラマーのJは、彼自身の身に生じたバグのことを理解できずにいた。2073年に禁止されたデバイスを使ってゲーム「世紀末図書館」の世界に入り、すでに物語が終わったキャラクターであるサヤとコーヒーを飲みながら見つめ合うJの日々。2073年に発明されてすぐに禁止されたDR(Dream Reality)デバイスは使用者にまるで本物のような仮想現実を体験させる装置だが、繰り返される日々の中で、サヤはまるで自我を得たかのようにJのそばにいるようになった。ゲーム、現実、そしてJの夢が混ざり合う。この気持ちはどこまでが本物なのだろう?サヤのプログラムに生じたバグの原因はJなのか?それとも、サヤの存在自体がゲームのバグなのだろうか?
本作は作者自身の体験からインスピレーションを得て創作された。ゲーム内のキャラクターに恋した作者がゲーム内のクエストを終え、そのキャラクターのストーリーがそれ以上進展しないにもかかわらず、頻繁にゲームをプレイして彼女に会いに行ったという。そこで「何も起きない」ということに寂しさを感じたことが、この作品を作るきっかけとなったそうだ。近未来を舞台としたSF漫画『2073年の電子玩具』では「テクノロジーから温もりを探す孤独感」が大きなテーマとなっている。物語が進むにつれ、バグの削除を職業とするJはゲーム制作を志すようになる。「創作」は物語の中でだけでなく、物語の外でも生じるというテーマこそ、日安焦慮のこれまでの創作における重要なテーマだと言える。
ゲームのバグ削除を専門とするプログラマー。仕事は優秀だが、恋愛経験は少ない。仕事上の便宜とリアル感を得るために、危険なデバイスで何度もゲームの世界に入り込んでいる。
ゲーム「世紀末図書館」に登場する本好きのNPC。同じセリフを繰り返すはずが、ある時、まるで自我を得たかのような行動を示す。
ゲームに登場する謎のキャラクター。全ての真相を知っているらしい。