原題の「野帳」とは標本化される植物を採集した時に記録用として使用されるノートのこと。台北植物園に所蔵数最多を誇る台湾最古の植物標本館「腊葉館」が完成したのは1924年のことだった。当時の台湾は植物調査の黄金時代を迎えていた。著名な学者が輩出し、活発な研究交流が行われていたこの時代に養われたプラントハンターの毅然とした精神は現代に脈々と受け継がれている。
そんな時代のある日、大稲埕の薬草店に『綱要台湾民間薬用植物誌』が出版されたという朗報が1人の客人によって伝えられるが、店主の粗野な息子が大惨事を引き起こしてしまい、損害を弁償するために腊葉館で働くことになる。台北植物園の研究資料を入念に取材し、大正時代のプラントハンターの不思議な日常を描いた本作は、植物の採集、記録、鑑定、研究、標本化という一連の流れと研究者たちの情熱と夢を追いながら、読者を台湾植物研究の飛躍時代に誘う。
薬草店の店主息子。薬草に詳しい。不注意から植物学者・佐々木の採集成果を焼損してしまい、弁償するために腊葉館で働くことになる。粗野な性格だが、腊葉館で働くうちに大人びていく。
台北植物園の職員。真面目で厳格な性格。採集作業を得意とする。
山賊村の少女。明るい性格だが、出生は謎めいている。植物の標本づくりに興味があり、涼山と松尾のチームに加わる。