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漫漫画人間 (漫漫畫人間)

任正華(REN ZHENG-HUA)
大塊文化
2003年 台湾出版界の最高栄誉「金鼎獎」受賞
2004年 行政院新聞局ドラマ漫画賞
2005年 国立編譯館優良漫画賞連環図書部門優秀賞
フランス大手出版社カステルマン社からフランス語版『Le fils』を出版
伝奇漫画家の代表作が復刻された。鋭い視点で人間の本質を切り取った作品。
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あらすじ

任正華の後期の代表的な受賞作品八篇を収めて復刻。それぞれ長さとテーマが異なる作品を集めた。病院での長期入院、家庭内暴力、職場での噂によるいじめや殺人、家庭における外国人ヘルパーといった重いテーマを取り上げ、人間の冷酷さをリアルに浮かび上がらせた。また、華人社会における愛情、婚姻、子孫継承といった感情のひだを文学的手法で描いている。古代のブラックユーモアやSFを盛り込んだ作品群は、どれも台湾漫画史上における重要な著作であるが、多くは絶版となっていた。今回、新たに編集を行い、彼女の精彩を放つ作品が読者の前に甦った。

『竹林七閒』は任正華が漫画界を引退する前の代表作の一つ。ゆったりと自在な筆のタッチで柔和にユーモアを交えて描く。飛び抜けた面白さは、それまでの作品とは完全に別の次元へと進化を遂げ、彼女の才能が全開した作品となった。発表当時、同人誌において少量出版された貴重な傑作。 『幸福家庭』は「病院の長期介護」を背景に何が「幸福」な家庭なのかを問いかける。家庭内暴力の残酷さも直視した。

『説不就是要』は前作に続き「真相は表面に見えるものだけではない」といった視点を軸に、「人の噂の恐ろしさ」や「ミソジニー(女性嫌悪)」の環境において女性が受けるいじめ、誤解、家庭でのストレスをあぶりだした作品。

「安娜的孩子(アンナの子供)」は外国人ヘルパーが家庭生活に入ってきた後、子供の教育問題の現実を細やかに描いた。

「勾引」は『倩女幽魂(チャイニーズ・ゴースト・ストーリー)』のような古代ブラックユーモアの小作品。ミソジニーを風刺した。

『造訪者』はマジックリアリズムで描かれた作品。自己追求と生命における信仰について突き詰めた。 『子息』は単行本として出版された長編作品。華人社会における子孫継承にまつわる感情を描いた。フランス・カステルマン社からフランス語版『Le fils(息子)』として出版された。

『鬥魚』は後書きとして製作された。本書で唯一の非虚構性の創作作品。作者の生命に対する考え方を垣間見ることができる。

登場人物

  • 陳玉芬

    陳玉芬

    公衆の面前で恋人を殺した罪で無期懲役となる。服役した刑務所で強制的に精神治療を受けることになった。一流企業の新入社員だった物静かな女性。

  • 蕭明祥(蕭仔)

    蕭明祥(蕭仔)

    陳玉芬の同僚。ハンサムで女好き。度々、強引に陳玉芬に言い寄る。

  • 邱医師

    邱医師

    裁判所の臨床心理士。陳玉芬の事件を担当し、彼女が殺人を起こした動機を一つずつ探り当てていく。

作者

任正華(REN ZHENG-HUA)

1963年台北生まれ。高等専門学校の時、第一回『小咪漫画』で新人賞トップを獲得。卒業後は宏広動画公司にて在職。1989年には『星期漫画(週刊漫画)』(時報出版)で長編『修羅海』を連作。三冊シリーズとなり、最も人気を得た代表作となる。

任正華の作品は鋭い視点から人の心にひそむ善悪の矛盾を幻想怪奇的なタッチと絵柄で描き出す。古典と現代のバランスも絶妙。アメリカンコミックのスタイルで制作した硬派作品もある。人間が持つ心の微妙な闇を描き出す力は飛び抜けている。風刺やユーモアのセンス抜群の台湾漫画家の第一人者。博海文化出版社と『楽透』漫画雑誌を出版。また、同人誌の販売も行う。シリアスもギャグも、自在に表現できる創作者。

2021年金漫賞「特別貢献賞」受賞

《漫漫畫人間》© 2020 任正華/大塊文化