任正華の後期の代表的な受賞作品八篇を収めて復刻。それぞれ長さとテーマが異なる作品を集めた。病院での長期入院、家庭内暴力、職場での噂によるいじめや殺人、家庭における外国人ヘルパーといった重いテーマを取り上げ、人間の冷酷さをリアルに浮かび上がらせた。また、華人社会における愛情、婚姻、子孫継承といった感情のひだを文学的手法で描いている。古代のブラックユーモアやSFを盛り込んだ作品群は、どれも台湾漫画史上における重要な著作であるが、多くは絶版となっていた。今回、新たに編集を行い、彼女の精彩を放つ作品が読者の前に甦った。
『竹林七閒』は任正華が漫画界を引退する前の代表作の一つ。ゆったりと自在な筆のタッチで柔和にユーモアを交えて描く。飛び抜けた面白さは、それまでの作品とは完全に別の次元へと進化を遂げ、彼女の才能が全開した作品となった。発表当時、同人誌において少量出版された貴重な傑作。 『幸福家庭』は「病院の長期介護」を背景に何が「幸福」な家庭なのかを問いかける。家庭内暴力の残酷さも直視した。
『説不就是要』は前作に続き「真相は表面に見えるものだけではない」といった視点を軸に、「人の噂の恐ろしさ」や「ミソジニー(女性嫌悪)」の環境において女性が受けるいじめ、誤解、家庭でのストレスをあぶりだした作品。
「安娜的孩子(アンナの子供)」は外国人ヘルパーが家庭生活に入ってきた後、子供の教育問題の現実を細やかに描いた。
「勾引」は『倩女幽魂(チャイニーズ・ゴースト・ストーリー)』のような古代ブラックユーモアの小作品。ミソジニーを風刺した。
『造訪者』はマジックリアリズムで描かれた作品。自己追求と生命における信仰について突き詰めた。 『子息』は単行本として出版された長編作品。華人社会における子孫継承にまつわる感情を描いた。フランス・カステルマン社からフランス語版『Le fils(息子)』として出版された。
『鬥魚』は後書きとして製作された。本書で唯一の非虚構性の創作作品。作者の生命に対する考え方を垣間見ることができる。
公衆の面前で恋人を殺した罪で無期懲役となる。服役した刑務所で強制的に精神治療を受けることになった。一流企業の新入社員だった物静かな女性。
陳玉芬の同僚。ハンサムで女好き。度々、強引に陳玉芬に言い寄る。
裁判所の臨床心理士。陳玉芬の事件を担当し、彼女が殺人を起こした動機を一つずつ探り当てていく。