「輓」。挽歌、輓聯とは、死者を褒め称えること。逝去から得るものがあり、得たものは逝去してゆく。
チェコでアートを学んだ阿尼黙は、挿絵、漫画、アニメといったジャンルを超えた分野で創作を行う。今作は構想に十数年、創作に専念して三年をかけた。三つの視点から「死亡」をテーマに描いた作品。
『早渓』は幼い頃、初めて死に接した後、沸き起こった震撼と言葉にできない穏やかな共鳴を描いた。
『家蚊』は、平行に並んだ二本の線で、蚊と人類の母親それぞれが次世代の繁栄へ向き合う時の葛藤する想いを描く。
『緞帯』は「思念の殺人」という奇想から、愛情の消失と久遠の思い出を描いた。
『小輓』に収められた三篇の物語は阿尼黙が「小さな死というもの」をイラストにした挽歌だ。
長い間、頭の中でめぐっていた物語を阿尼黙は文字を使わず芸術性の高いイラストで描き出した。台湾のノスタルジックな雰囲気と文化的要素を物語の背景に巧みに織り込んだ。構図、色彩、趣きは細部まで素晴らしく、アートと呼ぶべき作品となっている。三百ページに及ぶ連環画の水準は驚くほどの濃密さ。長組詩のように心を打つ作品で、連環画のコマからは多層的で複雑な感情と想いが伝わり、心を打つ。