「男性は父親になってやっと、父親とは何かを学び始める」とはよく言われることだ。私達は幼い頃、子供であることを学んだことはなかった。幼獣時代は好き勝手に動き回るので、父親の存在は忘れがちだ。自分が子供をもって初めて、かつて父親が何気なく自分に語っていた言葉を、自分が口にしていることに気が付く。気付かぬうちに、父親の影響が自分という生命に入り込んでいたことに驚くのだ。世界は変化し続けている。当時、父親が子供に与えようとした道が、今もこの時代に合っているとは限らない。私達はただ自分の知恵と経験をもとに、新たな生存の道を模索するしかないのだ。
小荘は「当時、父親は何を考えていたんだろう?何か焦るようなことはあったんだろうか?おむつ姿の赤ん坊を見てどんな気持ちだったのか?自分に子供ができて忙しくて休む暇もなくなった時、突然、当時の父親に対して興味が湧いてきたのだ。子供の成長を見守るのは、自分という人間をもう一度、生き直すようだ。父親になって初めて当時の自分の父の大変さを体験したのだ。だが、この二つの世代はお互いを理解するのに、長い時を経てしまう。そこで、自分が父親になった過程を記録に残そうと思った。この本に書いたことは、悩み戸惑っている未来の子供への贈物だ。
新米の父親。仕事と育児の間で、父親としてのステップをひとつずつ模索し学んでいる。難題や困難にも遭遇する。